書面決議とは
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます。
(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除きます。)
今回は、取締役会の書面決議の概要及び注意点とその具体的な運用方法について解説をしていきます。
1.要件
以下の要件をすべて満たしていることが必要です。
- 定款に定めがあること
- 取締役全員が書面又は電磁的記録(メール等)により提案に同意する意思表示をしていること
- 監査役が異議を述べないこと
2.メリット
書面決議を活用することにより、取締役会を開催せずに決議を行うことができます。
テレビ会議や電話会議による取締役会は、実際に会議体を開催しているので、会社法第370条の書面決議とは区別されます。
緊急・突発的な事案や、取締役会において審議する重要性が乏しい事案などに選択することが多いです。
新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛の際も有効な選択肢となりえます。
3.実際に書面決議を行う時の注意点
定款の定めについて
以下にて記載例をご紹介いたします。
第●●条
取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき議決に加わることができる取締役の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。ただし、監査役が異議を述べたときはこの限りではない。
書面又は電磁的記録による、取締役全員の同意の意思表示について
取締役全員が同意しなければならないので、ひとりでも同意しない取締役がいる場合は、書面決議は成立しません。
また、提案者である取締役自身の同意も必要です。
決議の目的である事項について、利害関係のある取締役は、当該事項について議決に加わることができないので、同意は不要です。
(当該取締役は、利害関係があり議決に加わっていない旨を取締役会議事録に記載します。)
なお、“口頭”での同意は認められず、“電子メール”での同意は認められると解されています。
監査役が異議について
監査役の同意は不要ですが、異議を述べられると書面決議は不成立となります。
監査役の異議を述べるタイミングについては、期限の定めがありません。
そのため、取締役全員が同意をしてみなし決議が成立したと安心した後に、監査役から異議述べられてしまう可能性もあります。
実務上は、監査役に「異議がないことを証する書面」への署名(記名押印)をいただくことが多いです。
なお、監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役は、そもそも取締役会に参加義務がありませんので、異議を述べることができません。
証拠書類の保存について
取締役会の書面決議において最も重要なことは、取締役全員の同意と監査役の異議がない旨の確認があったという証拠を残すことです。
以下をご参照の上、それぞれ証拠書類の保存をしていただければと存じます。
- 書面であれば、提案書と取締役全員の同意書、監査役の異議がない旨の確認書
- メール等の電磁的記録であれば、提案書をメール等にて送信し、そのメール等に返信する形で同意書や監査役の確認書を回収し、印刷又はデータにて保管
4.取締役会議事録
書面決議の際も、取締役会議事録の作成は必須です。
書面決議型取締役会議事録の法定記載事項については、以下をご参照ください。
書面決議型取締役会議事録の法定記載事項
- 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
- 1.の事項を提案した取締役の氏名
- 取締役会の決議があったものとみなされた日
- 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
(会社法369条、会社法施行規則101条第4項)
通常の取締役会議事録の法定記載事項
- 取締役会が開催された日時&場所
- 取締役会の議事の経過の要領及びその結果
- 特別な利害関係を有する取締役があるときは、その取締役の氏名
- 出席役員、出席株主の氏名
- 議長がいるときは、議長の氏名
- 出席取締役、監査役の署名又は記名押印
(会社法369条、会社法施行規則101条)