企業法務

代表取締役の予選について

代表取締役の予選の可否

取締役会を設置する株式会社は、取締役会の決議によって、代表取締役を選定します。

実務では、取締役会決議の効力をすぐに発生させるのではなく、少し先の将来の日に発生させたいというニーズがあります。

例えば、4月1日付で代表取締役を変更する株式会社が、新たに就任する代表取締役を3月の取締役会において決めておきたいというケースです。

これを代表取締役の予選といいます。

代表取締役の予選の可否については、登記実務上、さまざまな議論がされておりますが、以下のケースに大別をし、その可否について検討することができます。

  • 代表取締役の選定日と就任日が、各取締役の任期内において実行されるケース
  • 代表取締役の選定日と就任日との間で、各取締役の任期が一度途切れてしまうケース

以下では、各ケースについて、代表取締役の予選の可否を検討していきます。

代表取締役の選定と就任が各取締役の任期内において実施されるケース

本ケースの場合は、代表取締役の予選をすることができます

ただし、留意点としては、代表取締役の選定日と就任日との間が、長期間空いてしまうことは、法務上、適切ではないという点です。

株式会社は少なくとも3ヶ月に1度取締役会を開催する義務があります。

したがって、代表取締役の選定日と就任日との間に、3ヶ月以上の期間が空いてしまう場合は、直近の取締役会において、代表取締役の選定をすることが、法務の観点は望ましいといえるからです。

代表取締役の選定と就任の間で各取締役の任期が一度途切れてしまうケース

本ケースの想定としては、代表取締役の選定日と就任日との間で、定時株主総会が開催され、各取締役の任期が一旦途切れてしまうケースが挙げられます。

例えば、6月20日に定時株主総会があり、取締役の全員が任期満了する株式会社において、同日付で効力が発生する代表取締役の選定決議を、6月1日の取締役会において行いたいというケースです。

このような場合、以下の2つの条件に該当すれば、代表取締役の予選が可能とされています。

  1. 代表取締役の選定日と就任日とで、取締役の構成メンバーが同一であること
  2. 代表取締役の選定日と就任日との間が、長期間空いていないこと

①の要件は、定時株主総会において、現任の取締役全員が再任されることを条件としています。
新任の取締役を選任したり、任期満了で退任する取締役がいる場合には、代表取締役の予選をすることができません。

②の要件は、先にも述べたように、代表取締役の選定日と就任日との間が、長期間空いてしまうのは、法務上、適切ではないためです。

本ケースにおいては、前ケースより厳密に判断されることが多く、1ヶ月以上の期間が空いてしまっている場合、登記申請が受け付けられないという事例があるため注意が必要です。

したがって、取締役の事情等で、定時株主総会の後に取締役会を開催することができない場合に限り、可能な限り定時株主総会に近い日に取締役会を開催し、代表取締役の予選の決議をすることを推奨いたします。

あくまで原則は、定時株主総会後に取締役会を開催し、代表取締役を選定することといえます。