企業法務

取締役会議事録について(テレビ・電話会議編)

取締役会をテレビ会議・電話会議で行う場合

取締役会を開催する場合、原則として、取締役会の日の1週間前まで(定款にて、「3日前まで」等期限を短縮しているケースが一般的です。)に招集通知を発送し、取締役の過半数が出席することが必要です(会社法第368条、同第369条)。

株主総会とは異なり、取締役は、取締役会への出席を第三者へ委任することはできず、議決権の代理行使をすることが認められていません。
そのため、取締役が各地にいる場合は、各取締役のスケジュールを調整することが困難なことも多いです。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令を受け、取締役会をテレビ会議又は電話会議方式(以下「テレビ会議等」と言います。)にて行うことが増えています。

テレビ会議方式
インターネット等に接続されたテレビ又はパソコン等を利用することで、会議の参加者同士の音声と画像が同時に伝わり、意思疎通がお互いにできるシステムのことをいいます。
電話会議方式
電話回線を利用して音声で参加し意思疎通を行うシステムのことをいいます。

テレビ会議等による取締役会は、取締役が一堂に会するのと同等の相互に十分な議論を行うことができるシステムを備えている場合に、開催が可能であると解されています。(平成14年12月18日付民商3044号民事局商事課長回答、同3045号通知、会社法施行規則101条3項1号)

テレビ会議等によれば、取締役会の開催場所に取締役が実際に出向かなくても有効な取締役会を開催することが可能であるため、取締役会の開催が容易になると考えます。
また、テレビ会議等により参加した取締役も、当該取締役会に出席したことになります。

取締役会議事録の作成

このようにしてテレビ会議等により取締役会が開催された場合でも、通常どおり取締役会議事録を作成しますが、どのような情報を記載すればよいか迷われる方も多いかと思います。

一例として、取締役全員がWEB会議システムで取締役会に参加する場合について考えてみたいと思います。

注意点としては、取締役全員がリモートの場合でも、特定の場所を開催場所として設定する必要があります。
開催場所として設定する特定の場所には、取締役のうち誰かしらが存在している必要があります
(誰もいない場所を開催場所にはできません。)

例えば、取締役全員がそれぞれの自宅からテレビ会議により出席する場合、代表取締役の住所を開催場所として設定することが考えられます。
(代表取締役の住所は登記簿謄本にて公開されているため。)

このようにして開催したテレビ会議等による取締役会議事録には、開催場所として、代表取締役の自宅住所を設定し、そこへ、WEB会議システムで他の役員がアクセスしたという内容の記載することになります。

また、以下のような一文も記載します。

◆審議前
なお、議長は、審議に先立ち、テレビ会議システムにより、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることを確認した。
◆審議後
以上、本日のテレビ会議システムを用いた取締役会は、終始異常なく議題の審議を終了したので、議長は●時●分閉会を宣した。

取締役会の招集通知についても、通常通り開催場所として、代表取締役の自宅を記載しますが、以下の通り、かっこ書きでテレビ会議システムである旨を追記することになると考えます。

開催日時 2020年●月●日(●)●時
開催場所 東京都●●区●●●●●●
(ただし、緊急事態宣言が発令されましたので、本会は全役員テレビ会議システムでの出席をお願いいたします。)