NPO法人の代表理事
NPO法人は、特定非営利活動促進法第15条の規定により、理事を3名以上置く必要があります。
同法第16条の規定によると、それぞれの理事は、NPO法人を代表することができますが、法人の運営上、特定の理事を代表理事に選定することが一般的です。
代表理事の選定方法は定款に定めますが、現存するNPO法人は、「理事の互選」としている法人が最も多く、次に「理事会において選定」としている法人が多い印象です。
「理事の互選」が最も多く採用されているのは、所轄庁の提供する定款の雛形が「理事の互選」を採用しているためと推察します。
しかしながら、NPO法人によっては、「理事の互選」による選定は使い勝手の悪い規定となるため、NPO法人の実情に合わせて適切な選定方法を検討するのが、適切な運営をするためには必要です。
以下、それぞれの選定方法について考察していきます。
「理事の互選」について
「互選」について、特定非営利活動促進法に定義はありませんが、国語辞典等では「特定の人々が主としてお互いの話合いで選び出すこと」という定義がされています。
上記の定義をみると、互選の性質は理事会に近いものと考えられ、単に「理事会」として開催するか否かの違いのようにとらえることもできます。
しかし、法務局への登記申請では、「理事の互選」は「理事会において選定」と明確に取り扱いが区別されているので注意が必要です。
法務局での登記申請の際に、理事の互選で代表理事を選定したことを証明する書類には、理事全員の記名押印又は署名捺印が求められることが一般的です。
つまり、理事の互選において代表理事を選定する場合、理事全員の同意のもとで代表理事を選定する必要があるということです。
NPO法人によっては、理事の人数が多く、意見がなかなかまとまらないこともあります。
そのような法人の場合、「理事の互選」によって代表理事を選定することが難しくなってしまうため、「理事会において選定」としておくのが適切と考えます。
互選の決議要件について、特定非営利活動促進法上の規定はありませんが、手続き上の問題が起きないよう、理事全員の賛成が必要と解するのが現状では良いと考えます。
以上をまとめると、「理事の互選」は、理事の全員一致で代表理事を選ぶということになります。
「理事の互選」によって代表理事を選定すると定款に記載されている場合、「理事会」において満場一致をもって代表理事を選定すれば、「理事の互選」により選定したとして、法務局で有効に登記申請をすることができます。
(満場一致である必要があり、「過半数の賛成」ではいけません。)
「理事会において選定」について
理事会の決議要件は、NPO法人の定款に定めてあり、その決議要件に従って代表理事を選定することになります。
つまり、理事会は、定款の決議要件に従って決議をするため、理事の人数が多い場合や、意見が分かれる可能性がある場合でも、決議要件を満たしていれば、有効に代表理事を選定することができます。
理事の互選の場合は、法務局への登記手続き上、理事全員の全員一致が必要なため、この取り扱いが両選定方法の決定的な違いといえます。