NPO法人の設立について
NPO法人を設立するためには、目的・社員・役員などに関する10個の要件を満たす必要があります。
今回は、その10個の要件を、詳細に解説をしていきます。
目的に関する要件
1.特定非営利活動を行うことを主たる目的とすること
特定非営利活動とは、次の(1)と(2)のいずれもあてはまる活動のことをいいます(NPO法第2条第1項)。
(1)次の20分野のいずれかに該当する活動であること(NPO法第2条第1項別表)
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
(2)不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とすること(NPO法第2条第1項)
「不特定かつ多数のものの利益」とは、利益を受ける者が特定されていない多数の人の利益、つまり社会全体の利益(公益)を意味します。
2.営利を目的としないこと
「営利を目的としない(=非営利)」とは、活動に伴い剰余金・利益が生じても構成員(役員・社員)に分配しないということです。
つまり、事業活動にて利益を上げることは全く問題ありません。
3.宗教活動を主たる目的としないこと
「宗教活動」とは、施設の有無を問わず宗教の教義を広め、儀式行事を行い、信者を強化育成することをいいます。
4.政治活動を主たる目的としないこと
「政治活動」とは、特定のイデオロギーを推進し、支持し、またはこれに反対することをいいます。
※政治上の施策を推進し政策提言することは、これにはあたりません。
5.特定の公職の候補者、公職者又は政党の推薦・支持・反対を目的としないこと
「特定の公職」とは、公職選挙法第3条に規定する公職をいい、衆・参議院議員、地方公共団体の議会の議員及び首長の職があたります。
※政治運動については、たとえ従たる目的であったとしても、法人として行うことは一切認められません。
社員に関する要件
6.社員が10人以上であること
「社員」とは、法人の構成員で、総会において表決権をもつ会員のことをいいます。
7.社員の資格の得喪に関して不当な要件を付さないこと
「不当な条件を付さない」とは、誰でも自由に社員になれ、またいつでも社員をやめることができることです。
条件を付ける場合は、団体の目的・事業内容に照らして、合理的かつ客観的な理由がなければ認められません。
役員に関する要件
8.理事3人以上及び監事1人以上を選任すること
役員の構成については、NPO法第21条に親族の排除規定があるので注意が必要です。
NPO法第21条(役員の親族等の排除)
役員のうちには、それぞれの役員について、その配偶者若しくは三親等以内の親族が1人を超えて含まれ、又は当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が役員の総数の3分の1を超えて含まれることになってはならない。
要約すると、役員を最低人数の4人(理事3名、監事1名)でNPO法人を設立した場合は、三親等以内の親族は含まれてはいけません。
三親等以内の親族を役員に入れる場合は、役員の総数を6人以上とする必要があります。
9.役員報酬を受けるものは役員総数の3分の1以下であること
「役員報酬」とは、役員としての地位や職務に対する報酬のことです。
必要経費として交通費や職員としての給与を支払うことは問題ありません。
また役員報酬の額については、金額を制限する規定はありません。
しかし、合理的な範囲を超えて役員報酬を支払った場合、実質的な剰余金・利益の分配とみなされる場合があります。
その他の要件
10個目の要件として、「暴力団でないこと、暴力団又はその構成員若しくは暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過しないものの統制下にある団体でないこと」が挙げられます。
まとめ
上記の10個の要件を満たせば、NPO法人は必ず設立できます。
その理由は、NPO法人の設立は認証主義が採用されているからです。
「認証主義」とは、法律に設立要件を明文化し、その要件に適合していれば必ず法人の設立を認めなければならないとするものです。
NPO法人を設立する場合、まずは10項目の要件を満たしているかを確認することが大切です。