電子提供制度の概要
会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)により、新たに株主総会資料の電子提供制度が導入されます。
上場会社は、電子提供制度の採用が義務付けられるため、その理解がたいへん重要です。
株主総会資料の電子提供制度とは
電子提供制度とは、株主総会参考資料等をWEBサイト上で株主に提供することができる制度です。
【株主総会参考資料等】
- 株主総会参考資料
- 議決権行使書面
- 計算書類及び事業報告
- 連結計算書類
電子提供制度を採用する会社は、以下のいずれか早い日から、株主総会の日後3か月を経過する日までの期間、株主総会参考資料等をWEBサイト上で提供することが求められます。
- 株主総会の日の3週間前の日
- 株主総会の招集通知を発した日
電子提供制度を導入するには、定款に電子提供制度をとる旨を定めます。
上場会社の場合は、電子提供制度の採用が義務付けられるため、改正会社法の施行日以降、電子提供制度をとる旨の定款の定めを設ける定款の変更の決議をしたものとみなされます。
上場会社の対応
株主総会の対応
上記のように、上場会社は、電子提供制度をとる旨の定款の定めがあるものとみなされるため、株主総会を行う際は、電子提供制度をとることが求められます。
ただし、新会社法の施行日から6か月以内の日に行う株主総会の招集手続きは、電子提供制度の適用はされないため、従来の招集手続きをとります。
新会社法の施行日から6か月を経過した後の株主総会の招集手続きから、電子提供制度をとる必要があります。
登記手続き
上場会社は、新会社法の施行日から6か月以内に、その本店の所在地において、電子提供制度をとる旨の登記をしなければなりません。
また、上記の登記をするまでの間に、他の事項の登記申請をするときは、その登記申請と同時に、電子提供制度をとる旨の登記を申請しなければなりません。
定款の変更決議
上場会社は、電子提供制度をとる旨の定款の定めがあるとみなされますが、実際の定款にその記載を追加する時は、株主総会にて定款の変更決議をする必要があります。
新会社法の施行日より前に、定款の変更決議をしておけば、施行とともに電子提供制度をとる旨の定めを、自社の定款に反映させることができます。
新会社法の施行日以降に、定款の変更決議をする対応も考えられますが、最新の法律を反映させた自社の定款を備え置くことが望ましく、新会社法の施行日より前に定款の変更決議を行うことが最良と考えます。
定款の変更決議をして、電子提供制度をとる旨の規定を設けた場合は、定款変更の効力発生日より2週間以内に、その本店の所在地において、電子提供制度をとる旨の登記をしなければなりません。
電子提供制度の留意点
電子提供制度をとることにより、株主総会参考資料等をWEBサイト上で公開をすることができますが、株主から書面により交付することを請求された際は、個別に書面による交付をする必要があります。
また、電子提供制度をとることができるのは、株主総会参考資料等であるため、株主総会の招集通知は、これまでの通り書面で交付する必要があります。
株主総会参考資料等の書面交付が不要なため、記載の分量は大幅に減少しますが、株主総会の日時・場所・議題・議案等を記載した招集通知を書面により株主に交付します。
株主総会の招集通知の交付は、株主総会の日の2週間前までにする必要があります。
電子提供制度をとる株式会社は、一律2週間前までとされます。
これまで定款の規定によりそれよりも短い期間を設定していた法人も、株主総会の日の2週間前までに招集通知を交付する必要があります。