NPO法人化について
これまで任意団体として活動してきた団体が、NPO法人を設立したいと考える場合の手続きについて解説をしていきます。
法人化するための手続
これまで活動してきた法人格のない任意団体が法人格を取得しようとする場合、任意団体をそのまま法人格の主体とすることはできません。
個別にNPO法人を新規に設立し、新設NPO法人に任意団体の資産等を移管する必要があります。
以下では、手続きに関する留意点を解説していきます。
新設するNPO法人側の手続きと留意点
NPO法人の新設の手続きが必要
新設するNPO法人について、設立手続きを実行します。
具体的には、以下の手続きが必要になります。
- 必要書類の準備
- 所轄庁への設立認証申請
- 法務局への設立登記申請
新設するNPO法人の資産・負債については、すべて0としておくことが一般的です。
契約関係の処理
契約関係については、以下のいずれかの手続きをとる必要があります。
- 既存の任意団体名義での契約をそのまま承継させる
- 新設NPO法人において、新たに当該契約を再締結する
いずれにしても一方的にはできず、契約相手方の同意が必要です。
税務上の留意点
NPO法人は法人税法上の収益事業を行う場合に限り、法人税の申告及び納付義務を負います。
一般的には、NPO法人が「収益事業」の会計区分上で寄附金の受入れをすることは考えられないため、課税されるケースは稀であります。
既存の任意団体側の手続きと留意点
現金化のうえで、現金を寄附する手続き
既存の任意団体において発生した債権及び債務は、任意団体として回収及び弁済を済ませておき(現金化)、残余財産(現金)がある場合に、当該財産を新設NPO法人に引き継がせることが一般的です。
既存の任意団体において発生した債権及び債務を、新設NPO法人に引き継ぐ(債権譲渡・債務引受)という方法も理論上は可能です。
しかし、以下の2つの理由から、現金化した後の資産を引き継がせることが一般的です。
- 既存の任意団体から新設NPO法人への寄附による引き継ぎは設立時に全額を行う必要がないこと
⇒先に当面の資金を寄附し、回収及び弁済を進め既存の任意団体の残余財産が確定してから残額を寄附することとしても問題ないです。 - 引き継がれた債権が回収不能となるリスクがあること
新設NPO法人においては、既存の任意団体から引き継いだ金銭を「受取寄附金」として収益計上することとなります。
継続使用の有形固定資産
土地や建物、自動車等の有形固定資産を引き継ぐ場合は、継続使用の観点から現金化することなく、そのまま引き継がせることが一般的です。
その際は、「現物寄附」という形で新設NPO法人に引き継がれることになります。
なお、例えば代表者個人が所有する不動産を新設NPO法人に寄附する場合、譲渡側から対価を受領しなくても、公正な時価により譲渡したものとして所得税の課税を受けます。
ただし、国税庁長官の承認を受けた場合は所得税が非課税になります。
また、不動産、自動車の寄附を受けた新設NPO法人側には、それぞれ不動産取得税、自動車取得税が課されます。
現物出資にかかる特別の規制の有無
株式会社の場合、会社法上、金銭以外の財産を出資する場合には、原則として検査役による調査等の特別な手続きを経る必要があります。
しかし、NPO法人の場合、そのような特別の規制は存在しません。
したがって、合理的な算定方法を用いて公正な時価を算定すれば問題ありません。
まとめ
任意団体として活動してきた団体が、NPO法人の法人格を得る場合、上記の手続きをとる必要があり、たいへんな時間と労力を要します。
しかし法人格を得ることで、対外的な信用度が増すことや、補助金・助成金を受給しやすくなる効果が期待できます。
税制面でもNPO法人は、任意団体や他の法人格よりも優遇されているので、任意団体として活動している方がいらっしゃいましたら、ある程度事業の先行きが見えた段階で、法人格の取得を検討されてみてはいかがでしょうか。