NPO法人の理事・監事の責任について
NPO法人の役員である、理事及び監事の負う責任について解説していきます。
NPO法人に対する責任
善管注意義務
NPO法人と役員(理事及び監事)とは、法律上「委任」の関係にあります。
委任契約において、受任者である役員は、「善良な管理者の注意」をもって委任事務を処理する義務をNPO法人に対して負っています。
一般的に「善管注意義務」と呼ばれるもので、常勤・非常勤、報酬の有無にかかわらず責任を負います。
「善良な管理者の注意」とは、その者が属する階層・職業等において一般に要求されるだけの注意をいいます。
つまり、自分の能力に応じた程度という主観的なものではなく、客観的に要求される程度の注意を意味します。
したがって、NPO法人の役員として、一般に要求される注意が求められることになるので、自分の能力の範囲で注意を尽くしたとしても、一般に要求される注意に達していない場合は、善管注意義務を尽くしたとは認められません。
役員が善管注意義務を怠り、当該NPO法人に損害を与えた場合は、債務不履行責任を負うこととなります。
理事の利益相反行為
NPO法人と理事との利益が相反する事項については、理事は、法人の代表権を有しません。
この場合、所轄庁は、利害関係人の請求又は職権で、特別代理人を選任しなければなりません。
このような理事の利益相反行為を防止する規定が設けられた趣旨は、理事がNPO法人の利益を犠牲にして、不当に自己の利益を図ることを防止する点にあります。
例えば、代表理事とNPO法人との間で、金銭消費貸借契約を締結する場合、双方の利益が相反するので、当該契約締結前に、所轄庁に特別代理人の選任の申請をすることになります。
一般的に申請書、特別代理人候補者の選任決議を行った社員総会(定款により、理事会とすることも可能)の議事録の写し、契約書の案を提出します。
特別代理人としては、他の理事が選任されることが一般的です。
なお、定款の理事会についての表決権の規定において、「理事会の決議について、特別の利害関係を有する理事は、その決議に加わることができない」と定めておくことが望ましいと考えます。
なお、上記規定に違反をして、NPO法人に損害を与えた場合は、当該理事は損害賠償責任を負います。
第三者に対する責任
役員が、その職務を行うについて、第三者に損害を生じさせた場合の損害賠償責任に関する規定は、特定非営利活動促進法には定めがありません。
もっとも各役員の行為について不法行為が認められる場合には、各役員は、第三者に対して損害賠償責任を負います。
また、特定非営利活動促進法は、NPO法人の第三者に対する責任について、「NPO法人は、代表理事その他の代表者が職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」としています。
まとめ
上記のように、NPO法人の役員(理事及び監事)は、NPO法人及び第三者に対し責任を負うこととなります。
特に利益相反行為については、無意識のうちに行ってしまっている事例が多いです。
特別代理人を選任せずに、契約を締結してしまい、その結果NPO法人に損害を与えてしまった場合、損害賠償責任を負うことが考えられますので、十分に注意する必要があります。
NPO法人の役員になった方は、特定非営利活動促進法や自社の定款の規定を再度確認し、自らの義務や責任について理解を深めることが重要と考えます。