NPO法人

NPO法人の事業承継の手法

NPO法人の事業承継

事業承継事業譲渡)とは、現在行っている事業を他の法人へ引き継がせることです。
NPO法人を運営していると、時として事業承継を行う必要性が出てくる場合があります。

今回は、NPO法人の事業承継の手法について解説をしていきます。

NPO法人の事業承継のパターン

NPO法人が事業承継を行う理由として多いのは次のような場合です。

  • 法人の解散
    事業を運営するための資金や人員が足りなくなってしまい、法人自体は解散したいが、事業はだれかに引き継いでほしいケース
  • 世代交替による事業承継
    これまで運営に携わっていた社員や役員が引退することになったが、内部には後継者がいないので、第三者に引き継いでほしいケース
  • 事業の選択と集中
    複数の事業を行っているが、特定の事業に特化したいので、ほかの事業を手放したいケース
  • 事業統合
    自らその事業を運営するよりも、第三者に運営を任せるか、他の法人の事業と統合させた方が事業の成長が見込めるケース

事業承継の手法

NPO法人の事業承継は、次の3つの方法が考えられます。

  1. 合併
    ⇒「法人の解散」をする場合に用いられる手法。
  2. 事業譲渡
    ⇒「事業の選択と集中」、「事業統合」をする場合に用いられる手法。
  3. 社員・理事の交替
    ⇒「世代交替による事業承継」をする場合に用いられる手法。

それぞれの手法の概要は下記のとおりです。

1.合併

合併とは、2つ以上のNPO法人が1つのNPO法人に統合することをいいます。

合併には、次の2通りの方法があります。

  • 新設合併
    2つのNPO法人が合併して消滅し、新たなNPO法人が設立される
  • 吸収合併
    1つのNPO法人が他のNPO法人を吸収して存続し、吸収されたNPO法人は消滅する

どちらの合併でも、消滅するNPO法人の一切の権利義務は、合併により新設されるNPO法人又は合併後に存続するNPO法人に引き継がれます

合併をするには、大きく4つの手続きが必要になります。

  1. 社員総会の議決(特定非営利活動促進法(以下、「NPO法」といいます。)第34条第1項)
  2. 所轄庁の認証(NPO法第34条第3項)
  3. 債権者保護手続(NPO法第35条、第36条)
  4. 合併登記(NPO法第39条、組合等登記令第8条)

また、認定NPO法人(特例認定NPO法人も含みます)が合併の当事者となり、合併後のNPO法人が”認定“の地位を承継するには、上記の手続きに加えて、所轄庁から合併の認定を受ける必要があります。
この認定を受けるには、合併の認証の申請の前に“認定“の申請を行う必要があります。

合併の効力が発生する日までに”認定”が得られていない場合には、認定が得られるまでの間、合併後に存続するNPO法人が、合併によって消滅する認定NPO法人としての地位を承継しているものとみなされます。(NPO法第63条第3項、第4項)

2.事業譲渡

事業譲渡とは、NPO法人が運営する事業の全部又は一部を他のNPO法人に譲渡することをいいます。

合併と異なり、当事者となるNPO法人が当然に消滅するということはありません。

事業譲渡は、その事業を構成する財産(資産・負債)、契約、従業員を承継するための手続きが個別に必要になります。
したがって、事業に関する財産等の一部のみを承継させることもの可能である一方、債務の承認や契約上の地位の移転に債権者や契約の相手方の同意が必要になります。

定款の定めにもよりますが、事業を譲渡する側及び事業を譲り受ける側のNPO法人双方において、社員総会の決議が必要になることが多いです。

また、事業譲渡に伴って、定款に定める目的の変更が必要になる場合もあります。
定款を変更するには、社員総会の議決や、所轄庁の認証変更登記申請が必要になります。

3.社員・理事の交替

社員・理事の交替は、NPO行う事業を他のNPO法人に移すのではなく、NPO法人の社員や理事を入れ替えることにより、NPO法人そのものを承継させようとするものです。

NPO法人の業務に関する意思決定を行う機関(社員総会や理事会)の構成員の一定数を入れ替えて、NPO法人の業務に関する意思決定を支配することで、NPO法人の事業を実質的に承継することが可能になります。

具体的な手続きは、既存の社員の脱退と、既存の理事の辞任を行い、新しい社員の入会と、新しい理事の選任を行うことになります。

これらに伴い、社員総会・理事会の議決、代表権を有する者の変更登記申請社員名簿・役員名簿の変更所轄庁への届出が必要になります。

まとめ

以上が、NPO法人の事業承継の手法になります。
それぞれ、効果や必要となる手続きが異なるため、個別の事情やニーズなどを踏まえて、適切な手法を選ぶ必要があります。

スキームの構築・実行には、高難度の専門知識が必要になるため、実務では、NPO法人に専門性のある行政書士に相談しながら進めることが一般的です。